チキンライスの現場で歴史を刻む職人魂

マレーシア文化通信『WAU』8号 現地取材記事 2016年6月1日配信

History of Malaysian Chicken Rice Spirit

取材・文・写真:Oto Furukawa

マレーシアのローカルフードのなかで、絶大な人気を誇るチキンライス。ふっくらゆでた鶏肉とゆで汁で炊き上げた香り米の最高のコンビです。マレーシアは、全国いたるところで名店が立ち並び、まるでチキンライス天国。でもそれは、店側からすれば、競争の激しい世界ということ。ペナンで創業40年を迎えたチキンライス店「ファッティ・ロー」。一皿にこめられているのは、店主の生き方であり、家族の歴史でした。

 1969年、ペナン島で「ファッティー・ロー」は開業。丸テーブルに、椅子はたったの15席。周りにはランブータンやマンゴスチンの木が生い茂っていたといいます。契約農場でチキンライス専用に飼育してもらった丸鶏をていねいに調理し、ゆで鶏とロースト鶏の2種を提供。たちまち評判となり、1日300羽を売り切る人気店に。

ロースト鶏、ゆで鶏(スチームチキン)各RM6~8(部位によって値段が異なる)、ご飯RM1、鶏足サラダRM5、内臓サラダRM5(※RM1=約30円)

 そもそもチキンライスは、さかのぼること1850年代。海南省から渡ってきた中国人が考案した料理だといわれています。海南省の名物料理である文昌鶏(ウェンチャンジー)が原型で、それを東南アジア人の嗜好にあわせてアレンジ。今では、マレーシアだけでなく、シンガポールやタイでも非常にポピュラーです。チキンライス以外にも海南料理に影響を受けたマレーシア料理は多く、海南省とマレーシアでは食材の共通点が多い、というのがその理由だとか。男性が料理をする習慣のあった海南人は、レストランや富豪宅のコックとして活躍して故郷の味を広めた、という説もあります。

 さて「ファッティー・ロー」に話を戻しましょう。現在、店を守っているのは、3代目のロー氏。みずから厨房に立ち、100席を超える大きい店になった今でも、先代から受け継いだレシピはほぼ同じ。副菜から卓上ソースまですべて店で作ります。ゆで鶏とロースト鶏の2種も変わらず。どちらもたいへん美味ですが、どちらか1種というなら、ぜひローストを。「アポロ」という伝統的なアルミ製の窯を使って焼き上げた鶏は、しっとりとした薄皮にタレがしっかり沁みていて、口の中で甘みがふわっと広がる。ほかの店では出会えない、ここだけの味です。

左より。鶏は契約農場から生の状態で毎日仕入れる。飼育期間は通常よりも10日間長く50日間を指定し、内臓を抜いた状態で2キロ以上のサイズが必須。「おいしさは鶏そのもの品質によるところが大きい」とロー氏。アルミ窯「アポロ」。遠火で蒸し焼きにする。鶏の位置を変えながら皮目を美しく焼き上げるのはプロの技。お米は炊くのではなく蒸す。生姜、ターメリック、パンダンの葉、鶏の脂でコクを出した鶏スープを入れ、専用のスチーマーで45分間蒸す。するとピラフのような味に

 ロー氏に将来の展望を聞くと「先のことは考えていない。ただ毎日全力を尽くすだけ」と。どうしてそんなことを聞くの?といわんばかりのすこし困ったような笑顔。毎日全力を尽くすという本気度。それは、客と向き合い、自分の置かれた立場にみじんもの疑問も持たず、いさぎよく前を向く、ということ。そうやって生み出されたチキンライスの味は、人の心を掴み、歴史を作り、決して誰にもまねできない味になったのです。

1996年に店を継いだロー氏。すべての工程でみずから腕を振るうのは、大事なレシピを守るためでもある。妻さえもレシピを受け継ぐことができるのは息子のみ

dsc_1555レストラン詳細

Fatty Loh Chicken Rice / 大肥羅鶏飯

住所:21,Jalan Fettes,Fettes Park,11200 Penang
営業時間 月9:30~16:00、火~日9:30~17:00
※月に1回休みあり
www.fattylohchickenrice.com

 

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