People 尾池富美子さん メイあさかセンター代表理事

池袋のマレーシア料理店「マレーチャン」で、サテをつまみにタイガービールを飲んでいたときのこと。オーナーの福沢ママが「音さん、この方、外務大臣賞を受賞している素晴らしい人よ」と紹介してくれたのが、尾池さんでした。尾池さんは、マレーシアの子供たちと日本の子供たちが描いた絵を互いに交換する活動を手がけて23年。絵を通して、マレーシアと日本の交流を深めている方です。実際にお会いして感じたのは、尾池さんは、自分の信念をカタチにして生きている人だ、ということ。その姿はとても美しくて、話していると、私にもエネルギーが湧いてくる時間でした。(2012年1月29日)


絵は言葉を必要としない会話。絵を見れば、相手の国のことが分かる

音: お部屋にマレーシアの凧や国旗が飾られていて、南国のようなあたたかい雰囲気ですね。まずは、尾池さんの活動について教えて下さい。

尾池さん: 子供が描いた絵を交換し、マレーシアと日本の交流を行っています。絵を提供してくれる子供たちの対象年齢は、6~18歳(小学校~高校)。小学生どうし、中学生どうしといったように、同じ年代の子供の絵と交換します。絵にテーマは設けていませんが、学校教育の一貫として描かれた絵が原則で、授業中に描いた絵を学校単位で交換します。交換された絵は、お互いの学校に半年間飾り、その期間が過ぎるとまた新しい絵を交換します。展示済みの絵は、メイあさかセンターで保管し、一般公開のイベントを行うこともあります。

音: なぜ、絵による交流なのですか?

尾池さん: 絵は、言葉を必要としない会話です。子供の絵なので、自分が見たもの、自分が考えたことが素直に絵に現れていて、お互いの国の文化や習慣が色濃く反映されたものになっています。つまり、絵を見れば、相手の国のことが分かる。また、教育方法の違いや画材・紙など使われている材料の違いを見ることもできます。

左より。「マレーシアの表現」Lee Chi Hin さん。「親善」Lee Shun Zhongさん。「夕餉の時」Khor Hui Gimさん。交換後の絵は描き手に返ってこないので、「上手な絵はコンクールに。その子の才能を伸ばしてあげて下さい」と尾池さん。メイあさかセンターより提供

絵はすべて、手渡しするのが活動のポリシー

音: 今まで交換した絵の数は、どれぐらいですか?

尾池さん: 年間に約2000点の絵を交換しているので、23年で約4万点になりますね。これらの絵はすべて、輸送ではなく、手渡し。これは私たちの活動のポリシーです。ジャングルのような場所にある学校でも、必ずそこまで出向きます。相手の顔を見て、大切な絵を託し、集めて下さった絵を大切に持ち帰っています。おかげで、私がマレーシアに渡航したのは、合計“サトゥラトス・スンビラン(笑)”(109回)になりました。

音: このプログラムを始めたきっかけは?

尾池さん: 夫がマレーシアに単身赴任をしたんです。その頃、家庭の事情で帯同することができず、離れて暮らすのなら、お互いの国を結ぶ活動をしましょう、と話したのが始まりです。私の子供たちが絵を描くことが好きだったこともあり、友人からアドバイスをもらって、1987年ペナンにて「絵」による交流がスタートしました。現在は、マレーシアで24か所(学校・図書館)、日本では関東を中心に29校(学校)がこのプログラムに参加しています。

音: 子供たちの反応はどうですか?

尾池さん: 日本の子供たちは、文化の違う民族がともに平和に暮らしていることに驚きますね。一方、マレーシアの子供たちは、テレビで見る近代的な日本とは違う景色に惹かれるようです。絵を描いてくれた子供たちには、ピンク色の賞状を渡しています。活動23年にもなると、小学生のときに賞状をもらった子が、学校の先生になって絵を指導する立場になっていたり、「子供が日本に留学しているの」と話しかけてくれたお母さんが、ピンク色の賞状の持ち主だったり。こういう出会いはうれしいですね。

マレーシア異文化交流ツアーの活動

左より。「食べ物」Wong Hui Enさん。「この国の様々な民族」Ooi Juo Minさん。メイあさかセンターより提供

左より。メイあさかセンターが発行する「国際友好賞」。 ペナン教育局局長と在ペナン日本国総領事のサインがある。社団法人「日本マレーシア協会」が発行する機関誌。表紙に掲載されているのがマレーシアの子供たちが描いた絵

音: 絵の交換の他にも、いろいろ活動をされているんですよね。

尾池さん: ちょうど先日(2012年の1月の半ば)、高校生11名のマレーシア異文化交流ツアーを引率しました。絵を通した交流から一歩進めて、小学生や中学生、学校の先生などを引率し、実際に、お互いの国の文化に触れる活動も行っています。


メイあさかセンターの事務局メンバー。左より鷹野さん、尾池さん、山田さん。絵を通した交流の活動は、地元新聞などの多くのメディアで報道されている

音: 尾池さんが23年もの間、この活動を続けていらっしゃるのはなぜ?

尾池さん: 国際理解こそが、平和への道すじです。未来を担う子供たちの教育に国際理解の視点があれば、平和が保たれる。考えてみて。自分の絵が置いてある国とは戦争はしないでしょう。今まで活動していて、戦争について言われることもありました。教科書には無いけど、語りつがれている歴史がある。でも、「尾池さんは、子供たちの絵を交換する活動をしています」と紹介されると、それまで険しい顔だった方が笑顔で握手をしに来てくれる。相手を知ること、理解すること。そこから平和が生まれるんです。生涯教育、ノーマライゼーションをテーマに、これからも活動を続けています。

音: 相手を知ることが平和につながる。その言葉、心に沁みました。

特定非営利活動法人メイあさかセンターの公式Webはこちら。

☆メイあさかセンターは、“絵を通じての友好”活動のために、寄付金を募集しています。
3,000円以上の寄付をすると、『絵で見るマレーシアの発展』(A4版・冊子・在庫がなくなり次第終了)を贈呈していただけるとのことです。

寄付金・カンパの振込先は
郵便口座 00130-9-114311 特定非営利活動法人メイあさかセンター

音の感想: 掲載した子供たちの絵、すごくいいですよね。これらは、日馬交流事業20年周年を記念して発行された冊子『絵で見るマレーシアの発展』から抜粋したものです。どの絵を見ても胸がじんわり温かくなり、心が伝わってきます。絵というものが、こんなにも、描いた人の習慣や文化、そして心を写し出すものだったなんて、初めて知りました。私は、マレーシアを感じてもらうために、マレーシアごはんを中心に活動にしています。食事は人の生活そのもので、マレーシアごはんを食べれば、マレーシアを肌で感じられると考えています。それはガイドブックを読むよりも百倍早く理解でき、そして、真実に近い。絵も同じなんですね。ちょっと曲がった線で描かれた屋台の骨組み。そこで笑っている家族の姿。いつもここでごはんを食べているんだね。絵を描いた人の気持ちが伝われば、人々の心の集合体であるマレーシア文化が実感できる。

絵も、ごはんも、言語を必要としないコミュニケーション手段です。きっと、お絵かきしている子供や、居酒屋で酒を酌み交わしているおじさんは、言語の要らない、いやむしろ、言葉よりも雄弁なコミュニケーションを楽しんでいる。コミュニケーションの基本は言語じゃない。空間なんですね。

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